2018年10月2日火曜日

(15)戦ひはどうなるか

「広告宣伝」においてとてもおもしろい本です!

「戦ひはどうなるか」昭和14
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1441388

この本の著者の清水盛明中佐という方は陸軍省の新聞班におられて、今で言う所のいわゆる広報官でした。押せ押せのプロパガンダでは国民に浸透しない、庶民レベルに合わせて楽しい雰囲気をもってして思想戦を戦うべきだと説いた方と知り、著書を探してみたところ本書が見つかりました。




この本は清水中佐が週刊誌の記事に執筆したものや講演を筆記したものを、陸軍省の嘱託編集員がまとめたもので、中でも「十章 戦争と宣伝」の項目がおもしろかったので一部取り上げてみます。


P207「宣伝内容の決定」
ここで宣伝を行うにはそれ専門の組織を構成することが必要と言っています。今でこそどの企業も広報部の存在は当たり前ですが、この時代はまだまだ広報の重要性が今ほど認識されておらず、この本でも後ろのページで、”日本の偉い人の中には、宣伝の重要性が分かっていない人も多く””宣伝というものが軽視されており””宣伝の研究者が少なく”みたいな愚痴も出ています。このあたりは今も大して変わりませんかね。

P208~「宣伝の方法」
当たり前ですが今の様にネットやテレビがあったわけではないので、この時代の広告方法をこまかく記述しています。ラジオ、広告、口伝、書物、ビラ、ポスター…。


P234漫画
思想をそのまま漫画にしても読者の気を惹かない、かと言って漫画家に任せてしまうとろくなものができない、みたいなことが書いてあったりして、今の漫画広告と変わらないじゃないか(^^)と思っております。
他に、民衆にわかりやすいモチーフを使う、相手の環境や文化に合わせて作る、など。今でこそ当たり前の事ですが、この当時この方は何度か失敗して理解したそうですよ。


P237写真・映画
すでに世界的に写真や映画を使ったプロパガンダが用いられているにもかかわらず、日本はまだまだだと訴えています。
「欺瞞写真」(加工写真)とモンタージュ(文字や効果の合成)で効果的に宣伝できるものを、諸外国に先を越され日本の悪評ばかり広がっている…などと書かれています。


清水中佐は宣伝に関しては特にドイツに倣っていたようで、その点では確かに当時のドイツはトップレベルだったと思います。P246~


ちなみにP253~「宣伝者の資格」として10項目上げておられますが、
(7)精力絶倫な人であること。とあります。不撓不屈の精神が必要だそうですが、全国の宣伝マンの皆様はすでにご存じではないでしょうか…。



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(64) 訓蒙開智・第2/生徒の革提

「訓蒙開智・第2/生徒の革提 」明治24 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1919205 明記されていないのでサイン識別になりますが、月耕の門下生だった小川耕一さんの挿絵ではないかと思われます。