「航空と女性」昭和18
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1068520
たまには残念な本もご紹介します。
昭和18年と言うと戦火が激しくなってきたころで、国民総蹶起などという名のもとに女性も戦争に駆り出されようとしていました。
こちらの本のタイトルは「航空と女性」で、なおかつグラビアには通信業務を担う女性、防毒マスクを身につける女性、(今で言う)フライトアテンダント、飛行機を作る作業に従事する女性、が掲載されているため、航空業務の中で活躍する日本女性が描かれているのかと思いきや。うーん、ちょっと違った。
まずこちらの作者の中さんは、航空機に関する著作をたくさん記された方です。ほかの本も少し読みましたが、そちらは割とおもしろかったのでまた改めて紹介したいと思います。
こちらの本の何が残念かと言うとずばり「女性」をモチーフにしたこと。先にも書いたように、このころ女性の手を借りないともう日本の航空事情は賄えないようになってきていました。そういった背景もあって記された本なのでしょうが、「女性は航空科学の知識に弱い」「主に防空を担うべき」、さらには戦闘機で戦死した息子を誇りとし、まだ出征していない末息子も国に差し出したいとする女性を讃える記述の連続。
家を守る女性は「防空」を担うべきだということで、やるべきことを書いているのですが、せいぜいできる事といえば防火用水を準備するだの、可燃性のものを土に埋めて置くだの、お粗末なことしか書いてありません。
この時代の男性の価値観としては普通と言えば普通ですが、グラビアページでは活躍する女性を掲載し、そのくせ本文では女性を卑下しているという、意味の分からない本でした。
これならまだ、この時代に軍人がよく書いていた、女性は夫を戦争で失い未亡人になっても、再婚せずに嫁いだ先に尽くすべきだとする記述の方がまだ理解できるかな。
「国立国会図書館デジタルコレクション」でネット公開されているアーカイブの中から、おもに挿絵画と広告・宣伝に関する本を取り上げてデータベース化していきたいコレクション。
2018年10月9日火曜日
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